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Sunday, February 03, 2008 9:01 PM
「洗練されたやわらかさ」


先日、東京国立博物館特別展、
「宮廷のみやび―近衞家1000年の名宝」に行ってきた。
陽明文庫の所蔵品からなり、とても面白かった。
その中でもとくに「書」が印象的だった。
たおやかな”かな文字”の美しさに惹かれた。
伝紀貫之筆も良かったが、
江戸末期の孝明天皇筆のもつ豊かさに、
脈々と続いた文化の流れと厚みを感じた。
そして何よりも江戸前中期の近衛家熙(いえひろ)の多才さに驚いた。
家熙の多彩な様式の書。
絵巻に書かれた書とともに、
自ら筆を執って描かれた、たおやかな画。
時代を超えて編纂された「大手鏡」。
「百寿」と呼ばれる一幅や「隷書心経」の一幅に現れる、
揺るぎない完成と美しさがありながら溢れてくるやわらかさが素晴らしかった。
また鎌倉時代の僧、明恵上人の「夢記」も見ることができた。
観念的で左脳的なものに取り囲まれて生きているせいか、
頭で考えている範囲の外側から生み出されたような、
やわらかで洗練された豊かさに惹かれた。
そして、
千利休・古田織部・小堀遠州の茶杓もあった。
利休の茶杓は2つあったがどちらとも骨張った主張の強いものであった。
利休は秀吉による切腹の命を受け入れ人生の終止符を自らの手で行った人だから、
利休その人の痛みと確信が現れているようであった。




 
   
 
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